アイコニア・ホスピタリティ株式会社
エリア総支配人
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礒崎 慎
Shin Isozaki -
1998年新卒入社。ホテルニューアカオの総支配人として再生期の現場を支え、エレベーター増設工事を見届ける。現在は同ホテルおよび草津エリアの4施設を統括するエリア総支配人。長年現場に寄り添い続けてきた実務派リーダー。
今回の語り手

アイコニア・ホスピタリティ株式会社
エリア総支配人
礒崎 慎
Shin Isozaki1998年新卒入社。ホテルニューアカオの総支配人として再生期の現場を支え、エレベーター増設工事を見届ける。現在は同ホテルおよび草津エリアの4施設を統括するエリア総支配人。長年現場に寄り添い続けてきた実務派リーダー。

ホテルニューアカオ
施設担当支配人
小島 正嗣
Masatsugu Kojima1997年新卒入社。レストラン、フロント、ウエディングなど多様な現場を経験し、現在は施設管理責任者。エレベーター増設工事を中心となって推進し、ホテルの象徴である景観と屋号を守り抜いた立役者。
長年、熱海の象徴として親しまれてきたホテルニューアカオ。その顔ともいえるのが、海上に大きくせり出すように建つ白亜の宿泊棟、オーシャン・ウイングです。1973年の竣工以来、街の景観の一部として歴史を刻んできたこの建物は、コロナ禍で休業を余儀なくされたものの、運営体制の刷新を経て2023年7月に営業を再開しました。
すると、そのユニークな建築意匠がSNSで大きな話題に。昭和レトロな雰囲気を新鮮に感じる若い世代を中心に人気が広がり、館内はかつてないほどの賑わいを見せるようになります。
見事な復活を遂げた一方、客足が急増したからこそ、ある問題が浮き彫りになりました。エレベーターの大混雑です。
もともと250もの客室数に対してエレベーターはわずか4基しかありませんでした。
エリア総支配人の礒崎慎は言います。
「チェックアウトの午前10時が近づくと、どのエレベーターも満員状態で(フロントがある上層階へ)上がってきます。途中の階からは乗ることができず、次を待ってもまた満員。ようやくフロントにたどり着いたお客様から厳しいお叱りを受けることも……。予約サイトのクチコミでも、混雑への不満が多く寄せられていました」
滞在の最後に不満が残れば、旅全体の印象を左右しかねません。お帰りになる瞬間まで、一貫して満足していただきたい――。そんな思いから、エレベーターを増設するという決断が下されました。
築50年を超える、海沿いの岩盤に建つホテルでのエレベーター増設は、もとより困難を極める作業です。しかも今回は、館内の営業を継続しながら工事を進めることになりました。
そのため、滞在中のお客様へ配慮して騒音の出にくい工法を選んだほか、周辺環境への影響を考慮して海を汚さない手法を採用。多方面へ細心の注意を払った結果、工期は10か月という長期間に及ぶことになります。
この長丁場を乗り切るため、施設管理責任者の小島正嗣はある決意を胸に秘めていました。
「お客様の快適性が最優先であることは大前提。それと同時に、工事の方たちがスムーズに作業でき、かつホテルのスタッフも気持ちよく仕事ができる。そんな三者の共存を図ることが私の責務だ」
それを実現する過程で、現場のホテルスタッフも少なからぬ負担を引き受けることになりました。資材搬入を優先するため唯一の業務用エレベーターを施工業者へ提供し、自らは混雑時間を避けながらお客様用を間借りする運用を徹底したのです。本来の作業動線が断たれる不自由な環境下で、スタッフは日々、状況に応じた細やかな調整を積み重ねました。
それでもスタッフが前向きに業務に取り組めたのには理由があります。礒崎らは事あるごとに、こう呼びかけていたのです。
「エレベーター増設はお客様の利便性向上に不可欠であり、未来への投資です。工事に伴う不便を強いることもあるかもしれませんが、よろしくお願いします」
工事の目的と完成後のビジョンを誠実に共有し続けていたことで、スタッフの目線が一致。これが難局を乗り切る確かな支えとなりました。
長期工事にもかかわらずお客様からのクレームはほとんど寄せられませんでした。「三方よし」を徹底した現場の姿勢が、大きなトラブルなく工事を完了させる鍵となったのです。
もう一つの大きな課題が、建物を上下に貫くエレベーターの通り道の確保です。検討を重ねた末、館内への影響が比較的少ない既存エレベーター隣接のバックヤードに設置場所を決定。それでも、各階の設備を移設する玉突き的な大改修になることは避けられません。現場では、限られた空間内でパズルのピースを組み替えるように配置転換が進められました。
お客様にとって最も大きな変化となったのが17階フロントの移設です。旧フロントがあった場所にエレベーターを新設するため、カウンターを同フロアの少し奥まった場所へと移すことになりました。
そこで何より大切にしたのは、長年この空間を彩ってきた記憶の継承でした。旧フロントの間仕切りに使われていた銀色の波型パネルを新しいカウンターの背面へ移し、かつて空調の吹き出し口を飾っていた金色の枠も、カウンターの前面へと引き継ぎました。


大事に守られてきたのは、目に見える意匠だけではありません。
例えば「ホテルニューアカオ」という屋号。これを守るために大きな役割を果たしたのが、小島でした。
「営業再開に向けた準備のなかでブランド名ごと変える話も出たのですが、残してくださいと直談判しました。長年、お客様は親しみを込めて『アカオさん』と呼んでくださっている。この屋号こそが最大の財産なんです」
2025年7月、新設されたエレベーターが稼働を始めました。一度に運べる人数は従来の1.5倍に増加。礒崎は言います。
「効果はすぐに表れました。お客様の流れが以前とはまったく違う。混雑を指摘するクチコミも今ではほとんど見かけません。『エレベーターが増えて便利になったね』とお客様から直接言われるようなことはめったにないのですが――」
そう言いつつも表情には嬉しさがにじみます。不便さを意識させず、当たり前の快適さを提供できるようになったことこそが、今回のプロジェクトの最大の成果だからです。
ホテルの刷新はこれで終わりではありません。2026年4月からオーシャン・ウイングにある全250室の改装が順次始まったほか、6月には波打ち際のダイナミックなロケーションに新設される初の屋外レストランがオープンします。同レストランでは、熱海のクラフトジン蒸留所「SEACLIFF」とコラボレーションし、熱海産のハバノリや熱海橙、静岡茶、レモンなど静岡県産素材をブレンドしたオリジナルジンを提供する予定です。続けて7月には宴会場を改修したキッズパークが、さらに2027年2月にはテルマエ風をテーマとした大浴場も誕生します。


昭和の趣を残しながら進化を続けるホテルニューアカオ。改修の裏側にあるスタッフたちの奮闘や、意匠に宿る継承のストーリーに思いを馳せることで、館内の景色もまた違った表情を見せてくれるはずです。その新たな魅力をぜひ現地でご体感ください。
ホテルニューアカオ