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「体験型温泉リゾート」霧島国際ホテル
前代未聞、山あいの砂むし風呂への挑戦

鹿児島空港から車で約30分、山肌から湯けむりが立ち昇る霧島温泉郷に位置する「霧島国際ホテル」。その一角に6月1日、霧島エリア初となる砂むし温泉施設「霧砂(きりすな)」がオープンしました。前例のない試みに向けた「砂」の選定や温熱システムの構築、そして職人技の習得に挑んだ現場の奮闘。これらが人気露天風呂の復活と結びつき、ここにしかない新たな温泉体験が実現しました。今回は、プロジェクトを支えたキーパーソンへのインタビューを通し、「体験型温泉リゾート」を志す人々の熱い想いに迫ります。

今回の語り手

林田 博

霧島国際ホテル
総支配人

林田 博

Hiroshi Hayashida

2021年8月に霧島国際ホテルに着任。経営体制の変更直後から現場の舵取りを担い、リニューアルや耐震補強工事を通してホテルの再建に尽力した。2024年2月、総支配人に就任。地域共生の未来を見据え、近隣施設や自治体と連携した活動にも精力的に取り組む。

二見 良一

霧島国際ホテル
施設 副支配人

二見 良一

Ryoichi Futami

40年間にわたりホテルのインフラを守り続けてきた、施設管理の責任者。館内すべての設備構造を熟知する。長年培った温泉管理の技術的知見をもとに、温泉蒸気を活用したエコな砂むし熱源システムを考案。「霧砂」の誕生を技術面から支えた立役者である。

宇都 将大

霧島国際ホテル
砂掛師

宇都 将大

Masahiro Uto

ホテル在籍5年目。2022年のビュッフェレストラン新設時に入社し、料飲部門のリーダーを務めた。「霧砂」開業に伴い「砂掛師」へ転身。元リーダーとしての経験を活かし、現在は砂掛師たちの中心として現場を支えている。

閉業寸前からの再出発、そして次なる一手へ

砂むし温泉「霧砂」

今年で創業55周年を迎えた「霧島国際ホテル」の一角に、6月1日、霧島温泉では初となる砂むし温泉「霧砂」が開業しました。連日多くのお客様が訪れ、山あいの地で砂に蒸される新鮮な体験を楽しんでいます。

しかし、今から5年ほど前には、このような賑わいが戻ってくるとは想像もつきませんでした。

2021年、同ホテルは業績悪化から閉業が決まり、建物の解体方針まで出されていました。ただ、霧島温泉郷の中心という立地、豊潤な源泉、長年培われてきた知名度といった魅力が色あせていたわけではありません。その価値を受け継ぐべく、アイコニア・ホスピタリティ(当時のマイステイズ・ホテル・マネジメント)が運営を担うことになりました。

当初は宿泊客の姿もまばらでしたが、ホテルは一歩ずつ再生の道を歩んできました。会食場からビュッフェレストランへの刷新、客室の改装、さらに大規模な耐震補強工事。地道な取り組みが実を結び、宿泊客数は約4倍へと大幅に増加しました。

こうして経営の足腰を固めたホテルが、さらに地の利を活かし、温泉体験をより充実させるために導入したのが、砂むし温泉でした。

砂むし温泉

40年のベテラン技術者には見えていた「実現の道筋」

鹿児島で砂むしと言えば、地熱で温めた海砂を利用する指宿のものが有名ですが、あえて山あいの地で挑んだのは、敷地内から湧き出る豊富な温泉蒸気を活用できるのではないか、という見立てがあったからです。霧島ならではの新しい入浴体験を提供できる――。そんな確信から始まった挑戦でした。

しかし、方針が決定したことと、それを形にできるかどうかは別問題。前例のない試みに、現場は何から手をつければいいのかさえ見当もつかない状態でした。

そうした中、一人だけ「実現への道筋」を冷静に描けていた人物がいます。40年間にわたり設備管理を担ってきた施設管理責任者、二見良一です。

二見は、当時をこう振り返ります。

「最初は『そういう考え方があったか』と膝を打つような感覚でした。技術的にも十分に可能だと思いましたね」

真っ先に思い浮かべたのは、館内で稼働している岩盤浴の構造でした。床下に温泉の熱水を通し、その熱で鉱石を温める仕組みです。「温める対象を砂に置き換え、さらに長年培ってきた『蒸し湯』(高温の水蒸気を室内に満たして体を蒸す伝統的な入浴法)のノウハウを掛け合わせれば、砂むしも原理的には成立する」――。二見はすぐにそう見抜いたのです。

シリカ砂

霧島らしさを追い求め、シラス由来の「シリカ砂」を採用

ただ、そんなベテラン技術者にも、使用すべき「砂」に関する知見はありませんでした。

「やるからには霧島らしさを表現したい」と理想の素材を模索する中でたどり着いたのが、シラス由来のシリカ砂(山砂)。鹿児島の火山帯とも深い関わりを持つこの砂は、優れた熱伝導性を備えており、機能面からも採用の方針が固まりました。

しかし、本当の試練はここからでした。砂むし風呂にシリカ砂を用いた前例は見当たらず、温度制御に関する具体的な数値データは皆無だったのです。

そこで現場スタッフは、プラスチックコンテナを断熱材で区切って配合の異なる砂を敷き詰めた検証装置を自作し、温度変化を地道に記録。3か月以上をかけて徹底的に比較検証を繰り返した結果、ほぼ100%という高純度のシリカ砂が最適との結論に至りました。

高純度のシリカ砂

燃料ゼロで極上の“湯加減”を。温泉蒸気を活用したエコな熱交換システム

砂を安全に温め、極上の“湯加減”を実現するシステムの構築には、ホテルが誇る独自の仕組みが活用されました。

同ホテルは、敷地内から湧き出る120〜130度の温泉蒸気を使うことで、創業以来55年間ボイラーを一切使わずに館内の給湯や冷暖房を賄ってきました。今回の砂むしでもその仕組みを応用し、高温の蒸気から作った熱湯を砂底の配管へ循環させるシステムを構築。火を一切使うことなく、砂全体を入浴に最適な47〜48度へと間接的に温めるエコな熱交換を実現しています。

さらに砂のコンディション面でも、約2時間おきに熱湯を下から湧き上がらせて砂の層を洗浄する仕組みを導入。熱殺菌と適切な温度管理を両立させ、砂の状態を常に最適に保っています。

洗浄と適切な温度管理を目的に、約2時間おきに熱湯を砂底から湧き上がらせる 洗浄と適切な温度管理を目的に、約2時間おきに熱湯を砂底から湧き上がらせる

全員が未経験。新人「砂掛師」たちの奮闘

設備を整えるだけで準備が終わるわけではありません。「砂掛師(すなかけし)」と呼ばれる職人を、ゼロから育成する必要がありました。

その一人が宇都将大です。元々は料飲部門のリーダーでしたが、「霧砂」開業に合わせて砂掛師を務めることに。宇都は苦笑交じりに言います。

「僕も含めて全員が未経験。見ている限りでは簡単そうだなと思ってたんです。でも、いざやってみたら意外と難しくて」

まず、砂をかける加減がつかめません。「霧砂」で使用するシリカ砂は、細かい砂利ほどの粒の大きさで、ずっしりとした重みがあります。高い位置から落とすとお客様の体に大きな衝撃を与えてしまうため、あくまで優しくかける必要があります。

新人の砂掛師たちは2人1組となって互いにスコップで砂をかけ、安全で快適な手順の確立に向けて試行錯誤を重ねました。

「霧砂」は、砂むし風呂としては珍しい屋内施設。天候に左右されない快適な空間である一方、室内には熱気と湿気が満ちています。だからこそ、砂掛師たちは、お客様のわずかな体調の変化にも細かく気を配らなければなりません。

重い砂を操る体力的にも厳しい仕事をこなしながら、同時に繊細なホスピタリティを体現する。彼らが現場を支えてこそ、霧島ならではの砂むし体験が成立しています。

砂むし風呂と名湯が織りなす、至福の温浴体験

実際に砂むし風呂を体験してみると、そこでの時間は従来のイメージを覆す新鮮な驚きに満ちています。

浴衣姿で横たわった体の上に、熱せられた砂が砂掛師の手によって次々と重ねられていきます。砂に埋まっていくという非日常的なシチュエーションがもたらすのは、ちょっとした高揚感と楽しさです。

最初は砂の重みに意識が向くものの、やがて不思議な安心感を覚えるようになります。目を閉じ、何も考えずにただじっと熱を受け止めていると、全身がくまなく温まっていくのが分かります。10~15分の入浴後、立ち上がったときに肌にぽつぽつと残る砂の跡は、しっかりと圧がかかっていた証拠。

そして、この極上のリラックスタイムには、まだ続きが用意されています。

「霧砂」での砂むし体験をより特別なものにするのが、隣接する露天風呂「白紫乃湯(びゃくしのゆ)」です。

日光の角度によって乳白色からミルキーブルーへと湯の色が変化する白紫乃湯は、かつて本館の露天風呂を凌ぐほどの高い人気を誇りましたが、2023年に建物の老朽化に伴い営業を休止していました。そんな中、大切に残されていた湯船が、「霧砂」の誕生とともに運命的な復活を果たしました。

白紫乃湯

「砂むし風呂」で体の芯まで温まったあと、シャワーでさっと砂を洗い落としたら、すぐに隣の白紫乃湯へ直行できます。この動線のスムーズさこそが、同施設ならではの大きな魅力です。

火照った肌に霧島の山々から吹き抜ける心地よい風を浴び、移り変わる湯の色を眺める――。そんな贅沢な温泉体験がここに誕生したのです。

「体験型温泉リゾート」を起点に、温泉郷全体の未来を切り拓く

体験型温泉リゾート

新設された「霧砂」にとどまらない「温泉エンターテインメント」の幅広さが、霧島国際ホテルの真骨頂です。

本館の大浴場には10種類以上のお風呂が揃うほか、名物の泥パックや蒸し湯なども楽しめます。ビュッフェレストラン「霧島湯けむりテラス」では、温泉水で蒸し上げる黒豚など約90種類のメニューを提供。さらに、ラウンジでの焼酎やコーヒーのフリーサービス、伝統芸能「九面太鼓」の演奏など、温浴以外のおもてなしも充実しています。

館内での体験にこだわる理由を、総支配人の林田博はこう語ります。

「おじいちゃんおばあちゃんからお孫さんまで、3世代で楽しめる場所にしたいんです。お湯に浸かって終わりではなく、多様な過ごし方そのものを楽しんでいただく。私たちがここを『体験型温泉リゾート』にしようと考えているのは、それが理由です。そのコンテンツが『霧砂』の完成によって、さらにワンランク上のものになったと確信しています」

林田の視線は、霧島温泉郷全体の未来へも向けられています。

「霧島には、泉質が異なる素晴らしい温泉が他にもたくさんある。周りのホテルや飲食店、そして自治体とも手を取り合って、いつかはこの街全体を巡って楽しんでもらえるような、そんな霧島の未来をみんなで形にしていきたいですね」

幻想的な霧島温泉郷

山肌から真っ白な湯けむりが立ち昇る、幻想的な霧島温泉郷。唯一無二の砂むし温泉「霧砂」が、皆様のお越しをお待ちしています。進化した「体験型温泉リゾート」の魅力を、ぜひ現地でご体感ください。

霧島国際ホテル
霧島国際ホテル

〒899-6603
鹿児島県霧島市牧園町高千穂3930番地12
TEL:0995-78-2621(代)

鹿児島空港から車で約30分!
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