アイコニア・ホスピタリティ株式会社
FBディベロップメント2 部長
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岩崎 浩憲
Hironori Iwasaki -
2016年入社。グループ内ホテルで料理長を務めた後、本部にて全国の宿泊施設における料飲(Food & Beverage)開発を担う。フレンチ出身の知見を生かし、各地の風土に根ざした食体験の設計を手がける。休日にも自宅の厨房に立つほどの料理好き。
今回の語り手

アイコニア・ホスピタリティ株式会社
FBディベロップメント2 部長
岩崎 浩憲
Hironori Iwasaki2016年入社。グループ内ホテルで料理長を務めた後、本部にて全国の宿泊施設における料飲(Food & Beverage)開発を担う。フレンチ出身の知見を生かし、各地の風土に根ざした食体験の設計を手がける。休日にも自宅の厨房に立つほどの料理好き。

鳥羽オーシャンリゾート オールインクルーシブホテル
料飲課 マネージャー
東岡 萌
Moe Higashioka三重県志摩市出身。入社以来、料飲部門で着実に経験を重ね、現在は料飲課マネージャーとして、厨房とホールをつなぐデシャップ業務やレストラン全体の運営を担い、20代中心の若手スタッフを牽引。休日はおかげ横丁での食べ歩きや、名古屋でのショッピングを楽しむ。
伊勢志摩の豊かな自然に囲まれ、穏やかな鳥羽湾を一望する「鳥羽オーシャンリゾート」。今年8月、このホテルは滞在中のドリンクや軽食を気兼ねなく楽しめる、オールインクルーシブの宿へと生まれ変わりました。
その変革の核となったのが、館内空間の役割と食のあり方の大幅な見直しです。
かつて館内には2つのレストランがあり、それぞれ和食とフレンチを提供していました。なかでも2階にあったフレンチレストランは、2層吹き抜けで海を一望できる、館内随一の優雅な空間。ただ、その特等席を楽しめるのは、夕食にフレンチを選んだ一部のお客様だけでした。
訪れるすべてのお客様に、ここで海を見ながらゆったりと滞在していただきたい──。
そんな思いから、リニューアルでは2階をすべてのお客様が自由に寛げるオーシャンビューラウンジへと開放することにしました。
同時に、食事の場は最上階(4階)のダイニングへ一本化。「和か洋か」を選んでいただく従来の形式をやめ、ジャンルの垣根を超えて鳥羽の恵みを味わえる新たなコースへの全面刷新が進められたのです。
その開発責任者としてメニューづくりを託されたのが、グループのF&B開発を担う岩崎でした。
メニュー開発にあたり、岩崎が直面したのは、リゾートとしての世界観とお客様の期待をいかに調和させるかという課題でした。
全室オーシャンビューを誇る館内は、南仏コートダジュールを思わせる明るい光と鮮やかな青に彩られたリゾート空間。その洗練された佇まいには洋食のコースが自然と馴染む一方で、鳥羽を訪れるお客様が何より心待ちにしているのは、伊勢志摩の豊かな海の幸や新鮮なお造りです。
求められたのは、「贅沢なリゾート感」と「旅先で味わう本物の海の幸」の双方を満たす、見た目にも華やかで心躍る料理。その難題に対し、岩崎は従来の形式にとらわれないアプローチを模索しました。
「鳥羽はやっぱり魚介のイメージが強く、お客様の期待も非常に高い場所です。だからこそ、単に新鮮な魚を切り分けて、お醤油でお召し上がりいただくという『当たり前』で終わらせたくありませんでした。素材の旨みを余さず感じていただくために、お醤油をつけなくても一番美味しいバランスになるよう、ひとつの『完成された料理』として味わっていただきたいと考えたんです」
試行錯誤の末に岩崎が辿り着いたのは、素材の持ち味をまっすぐに生かす「引き算の調理」でした。味を複雑に重ねていくのではなく、余分な要素を削ぎ落として素材本来の旨みを際立たせる。それぞれの素材が持つ個性を丁寧に見極め、最も美味しく味わえる最適な仕立てを追求していったのです。
その象徴として生まれたのが、コースの序盤を飾る「伊勢志摩の恵みお造り9種盛り(9つの味覚パレット)」です。
テーブルに運ばれてくるのは、絵の具のパレットを思わせる器に、色鮮やかな海の幸が整然と並ぶ一皿。この料理の最大の特徴は、あえて「醤油皿」を用意していない点にあります。お客様が醤油に浸して味を決めるのではなく、塩で締めた白身魚に柑橘をあしらい、答志島(とうしじま)のしらすには酒盗を合わせるなど、9つの素材それぞれに最も適した下味や薬味があらかじめ施されているのです。
※旬の素材を厳選してご用意するため、お料理の内容は季節により変わります。
一口ごとに異なる食感や香りのグラデーションが広がり、リゾートらしい華やかさを放ちながら、伊勢志摩の海の豊かさを一皿で巡る特別な食体験を描き出しています。
この「素材の良さをシンプルに引き出す」という思想は、海の幸だけでなく、コースを彩る肉料理にも息づいています。
例えば、三重が誇る松阪牛には「お椀仕立て」を選択しました。濃厚なソースで味を重ねるのではなく、低温調理でしっとりと仕上げた肉に、かつおと昆布、野菜の滋味あふれる出汁を合わせる。素材本来の力強さを際立たせる一品が、コースに確かな満足感をもたらしています。
新たな料理が形になる一方で、現場ではそれを毎晩お客様へ届けるための体制づくりが進められました。その中心となって現場をまとめたのが、地元・志摩市出身の料飲課マネージャー・東岡です。
8月1日のリブランドオープン直後からお盆明けまで、ホテルは繁忙期を迎え、連日多くのお客様をお迎えすることとなりました。東岡ら料飲課のスタッフは系列施設でのトレーニングを経て臨んだものの、現場はすぐに想定外の壁に直面します。ドリンクを気兼ねなく楽しめるオールインクルーシブゆえに、お客様の滞在時間が想定以上に延び、夕食の2部制の進行が崩れかけたのです。
「お酒を何杯もおかわりして、食事の時間を心から楽しんでいただけるのは本当に嬉しいことでした。ただその分、テーブルごとの料理の進み具合がまったく読めなくなってしまったんです」
そのため、厨房とホールをつなぐデシャップで全体を統括する東岡の指示と、各テーブルの実際の進行状況にズレが生じていました。
営業が終わる夜9時半過ぎ。片付けを終えたレストランに、20代を中心とした料飲課のスタッフたちが集まりました。
「テーブルごとの食事やお酒の進み具合を、もっとこまめにデシャップと共有しよう」
「1部(前半)のお客様で、食事を終えてゆっくり飲まれている方には、『もしよろしければ、2階のラウンジでお酒の続きはいかがですか? 簡単なおつまみもご用意しております。』とお声がけしてみてはどうか」
毎夜1時間、持ち寄った課題を一つひとつ擦り合わせるミーティングがお盆明けまで連日続けられました。
オペレーションが整うにつれ、スタッフの表情からも硬さが消えていきます。当時の変化を、東岡はこう振り返ります。
「最初はみんな余裕がありませんでしたが、次第にお客様とお話しする機会が増えていきました。お召し上がり方に戸惑っていらっしゃるお客様にお声がけをしたり、『目の前の答志島で獲れたしらすなんですよ』と窓の外をご案内したり。お客様から『楽しかった』と言っていただける瞬間が、何よりの支えになりました」
若きチームが夜遅くまで重ねた対話が、新しく生まれ変わったダイニングに温かな活気と一体感をもたらしていったのです。
リニューアルによって生まれた変化は、食事の場だけにとどまりません。2階に新設されたラウンジに足を運べば、目の前に鳥羽湾の景色が広がり、気兼ねのない寛ぎの時間を過ごすことができます。
朝はやわらかな光の中で一杯のドリンクを口にし、日中は一面のガラス越しに青く輝く海を眺める。吹き抜けの開放的な空間には、生ビールサーバーや地元の酒、柑橘を使ったデトックスウォーターなどが用意され、滞在中はいつでも好きなときに、好きなドリンクで喉を潤すことができます。
「鳥羽の海は本当に穏やかで、ただ眺めているだけで心が落ち着きます。何もしないでのんびり過ごすことこそが、ここでの一番の贅沢だと思います」
岩崎がそう語る通り、この場所にはどこか時間の流れを緩やかにさせる空気があります。東岡もまた、ラウンジがもたらした滞在の変化を実感しています。
「以前は客室以外に寛げる場所が限られていましたが、今は時間を気にせず館内で思い思いに羽を伸ばせる場所ができました。お部屋で静かに寛ぐのも、ふらっとラウンジへ降りて海を眺めるのも自由。ここでの時間そのものを楽しんでいただけたら嬉しいです」
8月のリブランドオープンを経て、現場では今もより快適な滞在を目指してサービスの改善が続けられています。
鳥羽湾を一望する温泉露天風呂での湯浴みはもちろん、夜のラウンジで提供される特製の「伊勢エビ香る海老ラーメン」など、夕食後の時間にもオールインクルーシブならではの楽しみがちりばめられています。
これから鳥羽は、秋から冬へと向かい、食の魅力が一層深まる季節。伊勢志摩の島々で水揚げされる脂の乗ったトロサワラや、名物の牡蠣など、豊かな海の恵みが次々と旬を迎えます。巡る季節に合わせ、料理や館内での体験もまた新たな彩りを帯びていきます。
素材の良さをまっすぐに生かした料理と、スタッフの温かなもてなし、そして何もしない贅沢を味わう時間。伊勢志摩の豊かな美味に心を満たし、刻々と移ろう海景に身を委ねる──そんな特別なひとときを過ごしたくなったら、ぜひ新しくなった鳥羽オーシャンリゾートへ足をお運びください。

三重県鳥羽市安楽島町1061-9
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TEL:050-5443-6483