株式会社タイムレス
代表取締役/プロジェクトデザイナー
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中村 嘉樹様
Yoshiki Nakamura -
大手ゼネコンや設計事務所を経て、国内外のラグジュアリーホテルを数多く手掛ける「ホテルデザインの第一人者」。インテリアを「人の手に触れる建築」と定義し、五感を通じた体験価値の創造を追求する。領域の垣根を超えたプロジェクトディレクションに定評がある。
今回の語り手

株式会社タイムレス
代表取締役/プロジェクトデザイナー
中村 嘉樹様
Yoshiki Nakamura大手ゼネコンや設計事務所を経て、国内外のラグジュアリーホテルを数多く手掛ける「ホテルデザインの第一人者」。インテリアを「人の手に触れる建築」と定義し、五感を通じた体験価値の創造を追求する。領域の垣根を超えたプロジェクトディレクションに定評がある。

株式会社タイムレス
ブランドデザイナー
田中 孝祐様
Kosuke Tanakaインテリア設計事務所やブランディング会社を経て、国内外のホテル・商業施設の設計からブランド開発まで幅広く担当。インサイトとクリエイティブを融合させたトータルデザインを得意とし、空間の魅力を引き出す多様な体験価値を創造し続けている。

株式会社タイムレス
インテリアデザイナー
汪 琦様
Qi Wang中国・蘇州生まれ。14歳で来日し、文化学園大学でインテリアデザインを学んだのちデザイナーとして参画。緻密かつ冷静な視点で現場や素材と向き合い、デザインの完成度を高めている。日本語と中国語を操るバイリンガルでもある。
2026年1月、標高1,550mの女神湖畔に、自然と調和するホテル「蓼科レイクリゾート(旧AMBIENT 蓼科ホテル)」がリニューアルオープンしました。夏の涼やかな水辺や、太陽の光を受けてキラキラと輝く湖面。そんな蓼科ならではの爽やかな風景を求めて、多くの人がここを訪れます。
館内の温かみある空間を演出しているのが、あちこちにしつらえられた木製のインテリアです。ロビーのスツールや、レストラン内にある大きなパーティション、そして暖炉のそばに積まれた薪。どれも本物の木が持つ、優しくも力強い手触りを持っています。
蓼科レイクリゾートのロビー「森と湖に接する立地を生かし、肩肘を張らずに自然を感じられる空間を目指しました。そのキーワードとなったのが、スウェーデン語で『キャンプテント』を意味する『Lägertält(ラガータルト)』です」
そう語るのは、蓼科レイクリゾートの空間デザインを手掛けた株式会社タイムレスのデザイナー、田中孝祐さんです。北欧の人々が生活の中に自然を取り入れる「ラガータルト」というライフスタイルそのものを、女神湖畔で実現したいと考えました。
コンセプトが固まり、具体的なデザインを練っていた2025年5月、田中さんたちのもとにある情報が舞い込みました。同時期に改装を進めていた、同じアイコニア・ホスピタリティのグループホテルから、まとまった量の伐採木が出たというのです。
その経緯について、アイコニア・ホスピタリティでリニューアルを担当するチームマネージャー、奥山和也はこう振り返ります。
「山梨県富士吉田市にある『エバーグリーン富士』を『亀の井ホテル 富士』としてリブランドオープンするにあたり、どうしても一部のカラマツを間引きする必要がありました。そこで出た伐採木を有効活用できないかと考えたのです」
亀の井ホテル 富士その知らせに対し、田中さんは渡りに船とばかりに伐採木の引き受けを申し出ました。
「空間のアクセントとして、物語のある自然素材を取り入れたいと考えていました。特にカラマツは、白樺と並んで蓼科を象徴する樹木。富士でカラマツが出るというお話は、このプロジェクトに独自の強みをもたらすと確信しました」
富士から運び込まれたのは、樹齢を重ねた立派なカラマツの丸太でした。しかし、伐採直後の生木は水分を多く含み、建材としての加工には適していません。そのままでは薪として使われるくらいしか道はありませんでしたが、その力強い佇まいを目の当たりにしたデザイナーたちに躊躇はありませんでした。
タイムレスの代表、中村嘉樹さんは言います。
「本当に良い木だったんです。このまま捨てられてしまうのはあまりに惜しい。そこにしかない素材を生かし切ることにこそ、デザインの価値がある。年輪を重ねた豊かな表情を、なんとかして蓼科の空間に生かしたいという、執念に近い思いがありました」
生木を内装材として使用するには、乾燥工程が不可欠です。通常は数か月以上という長い時間を要しますが、限られた工期に合わせるため、窯を用いる手法を選択しました。急激な乾燥は木に大きな負担をかけるため、加工の中で割れたり歪んだりしてしまうリスクを伴いますが、あえてその難しい道を選んだのです。
施工会社や地元の材木業者と連携して窯を確保し、数日間窯に入れては取り出して状態を確認する作業を繰り返します。タイムレスのデザイナー、汪琦(ワン・チー)さんは幾度となく現地の材木屋へ足を運び、職人と対話を重ねながら、生きた素材と向き合い続けました。
乾燥前の生木乾燥の工程には約1か月が費やされましたが、懸念していた通り、激しい反りや割れが生じるものが続出しました。当初想定していた大きな板材や丸太としてそのまま使用できる状態で残ったのは、全体のわずか10〜20%ほど。しかし、ここからがデザイナーの腕の見せどころでした。
「素材そのままの良さを体験してほしい」と考えた汪さんたちは、不揃いな端材も決して見捨てませんでした。レストランのパーティションやカウンター、ロビーのスツールとして利用可能なものを選び出す一方、加工の過程で割れてしまった材も、あえてその割れを表情として活かし、意匠用の薪へと仕立て直したのです。
意匠としてロビーを彩るスツールにも、丸太の個体差に応じた細やかな調整を行いました。皮の表情が美しいものは、剥落を防ぐための接着を兼ねて白く塗装。一方、皮を剥いだものは黒く塗り、空間にリズムを生むアクセントに据えました。
「良いものから順に、丸太、板材、そして薪へ。形を変えながらも、あるものはなるべくすべて使い切る」(中村さん)
こうした作り手の意志が実を結び、富士から届いた伐採樹木のほとんどが無駄にされることなく館内の随所で新たな命を宿しています。
割れや反りのない表情豊かなカラマツを蓼科レイクリゾートの館内には、富士のカラマツ以外にも、別の施設から受け継がれたものが息づいています。それは、やはり同時期に改装中だった「安曇野高原リゾート」で、設計上の理由から火が入れられず、ほぼ未使用のままになっていた暖炉です。
今回のロビー空間は、フィンランド語で焚き火を意味する「Kokko(コッコ)」がテーマに据えられています。北欧の暮らしにおいて、火は自然の中で過ごす時間に欠かせない象徴的な要素。「キャンプテントで火を囲む」という体験を形にするためには、どうしても本物の炎が必要でした。
タイムレスが双方のデザインを手掛けていたこともあり、安曇野で出番を失い眠っていたこの暖炉が、蓼科の空間の主役として見出されました。
再利用の暖炉やスツールとして再生された木材が自然の素材が息づく空間は今、訪れるゲストの心にも確かな変化をもたらしています。
リニューアルオープン以来、チェックインを待つゲストがロビーのしつらえに興味を持たれる機会が増えました。スタッフが富士の伐採木のエピソードを紹介すると、特にサステナブルな意識が高い海外のお客様を中心に、ものを大切にする姿勢や環境への配慮に深く共感してくださるといいます。
デザイナーの執念と、現場スタッフが誇りを持って語る言葉。それらが重なり合うことで、再生された調度品は単なるインテリアを超えた、ゲストの心に触れるおもてなしの大切な一部となっています。
本来なら交わるはずのなかったものたちが、「北欧の暮らし」という一つのコンセプトのもと蓼科の地で結びつきました。これは決して、偶然ではありません。
アイコニア・ホスピタリティは、既存の施設を受け継ぎ、そこに眠る価値を引き出して再生させる事業を展開しています。「古いものを磨き、生かし切る」という理念が、プロジェクトの根底にあります。
多数の改装案件が同時進行する中で、こうした企業の姿勢は、タイムレスをはじめとする外部パートナーたちにも深く共有されていました。だからこそ、情報が現場単位で閉ざされることなく、施設を横断して素材が受け継がれていく流れが自然に生まれたのです。富士の木や安曇野の暖炉が蓼科で新たな役割を与えられたのは、効率を優先する現代において、あえて手間を惜しまない作り手たちの「想い」が生んだ必然の結果でした。
この理念は蓼科のプロジェクトにとどまらず、グループ全体で体現されています。例えば、宮崎県の「フェニックス・シーガイア・リゾート」の改装でも、既存資産に新たな役割を与える取り組みが行われました。


1階のバーラウンジを改装する際、開放感の創出と席数増加のために、それまで空間を彩っていたレプリカのヤシの木を撤去することになりました。効率を優先すれば廃棄となりますが、ここでもアイコニアは、デザインを担うタイムレスとともに「生かし切る」道を模索します。吹き抜けで繋がる3階に水辺をイメージしたキッズパーク「KIDS OASIS」を新たに設計し、そこへ5本のヤシの木を移設。1階と3階の空間的な一体感を保ちながら、かつての装飾を子供たちのリゾート体験を彩るシンボルへと生まれ変わらせたのです。
館内に次なる居場所を得た木々は、これから蓼科の四季とともにさらなる時間を刻んでいきます。田中さんは言います。
「季節や時間帯によって見えてくるものが変わること自体が、一つの自然体験。訪れるたびに異なる表情を楽しんでいただきたいですね」
かつて富士の麓で歳月を重ね、あるいは別の施設で静かに出番を待っていたものたち。その欠けや傷さえも愛おしい個性として受け入れた蓼科の空間には、ここにしかない特別な時間が流れています。
豊かな自然が織りなす繊細な移ろいを、ぜひ現地で確かめてみてください。
蓼科レイクリゾート
本記事でご紹介したこだわりの意匠や世界観を、ぜひ現地でご体感ください。
亀の井ホテル 富士
(旧:エバーグリーン富士)
「カラマツ」の故郷は、富士観光の拠点にも最適です。富士の森に囲まれた静かな空間で、ゆったりと癒しのひとときを。
安曇野高原リゾート
暖炉を蓼科へ送り出した安曇野高原リゾート。眼前に迫る山々の絶景を見に、ぜひお越しください!
フェニックス・シーガイア・リゾート
訪れるたびに進化し、新たな感動に出会える南国リゾート。ここは、「人生のご馳走」を味わう場所。


2026年5月16・17日、3回目の「チャリティーマーケット」をアートホテル鹿島セントラル(茨城県)で開催いたしました。宿泊施設で大切にされてきた食器等を次の使い手へ。ものを無駄にせず次へ繋ぐ当社の想いをかたちにした今回のイベントには、2日間で約750名もの方がご来場。3,600点弱の商品が新たな場所へと引き継がれる大盛況で終了いたしました。なお、今回の売上は全額寄付されます。